ヨクノカタマリ
キララク・シンラク・ルルシーが好物な隠れオタクの小言。
              
              
              
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DATE: 2007/01/03(水)   CATEGORY: 駄文
キララク
―季節はずれの転校生―


新しい年に変わってまだ間もないというのに、この街の1本の木に桜が咲いた。
その木はいく年もくる年も、丘の頂にぽつんと独り寂しく立ってある、そんな人目のつかない木だった。
しかし、この真冬の季節に綺麗な花びらをつけてるせいか、そのピンクは異様な目立ちようだった。

そこら中の人々はこの狂った木を見て、キレイだとかウツクシイだとか言うけれど、キラは違っていた。
綺麗だけど美しいけど、儚い。

いつまでも見守ってやりたい、と。






「ここからでも見えるんだな」

「あたりまえでしょ。アスラン知らなかったの?」

「キラは知ってたのか?」

「もちろん」


狂い桜の木はこの3-Aの教室からでもまるまる1本、綺麗に見えた。
キラはこの桜の木の存在に気付いていたが、洞察力の鋭いアスランですら気付いていなかった。
それほど、この木に知名度は無かったのだ。

確かに今この木の知名度は上がったはずだ。
だがこの教室にいるのは高校受験を控えた受験生達ばかり。
どのくらいの人が今、この桜を瞳に写しているだろうか。

きっと僕だけだろう。






「はい、みんな席に座って。今日は転校生を連れてきたわよ。さあ、入って」


物静かに、失礼します、と言ってドアをかたりと開けたのは、まさしく狂い桜のような人だった。
黒板の前に来るまでに、クラス中の人たちがキレイだとかカワイイだとか言っていたのを耳にしたけど、キラは違った。



『綺麗だけど
 美しいけど

 儚い。

 いつまでも見守ってあげたい、と。』



「ラクス・クラインと申します。どうぞよろしくお願いします」


彼女は義務的な挨拶を終えると指定された席に戻り、それと同時に授業が始まった。
先ほどまで散々仄めかしていた生徒たちも授業が始まると静まり返り、教師の発する言葉を一字一句漏らさず聞くことに専念していた。
しかし、キラは彼女を見つめ、この時期転校してきた理由について思考を凝らしていた。






昼休みになるとアスランと昼食を終えたキラは屋上に行くことが日課になっていた。
そこはまだ1月でかなり冷え込むが、教室にいても受験モードの生徒たちばかりが目に付いて仕様が無い。
かと言って廊下に出ていた方が、身体の芯から蝕む寒さに身を震わせなければならない。
そう思うと一番日の当たる屋上が学校の中では一番暖かいのではないかと思えたのだ。

今日もいつものように階段を上がってドアを開けると、いつもとは違った物が視界に入った。
ピンクの髪をした女の子。
この学校では独りしかいない。
先ほど転校してきたばかりの季節はずれの転校生。
キラはこの綺麗な顔をした先客に話しかけた。


「狂い桜を見てるの?」

「あなた、は…?」

「あぁ、ごめん。自己紹介がまだだったね。僕はキラ・ヤマト。君と同じクラスだよ」

「そうでしたか。失礼しました。ここだと見晴らしが良くて、十分にあの桜を堪能できるかと思いまして」


そう言った彼女の横顔は本当に綺麗で、だけど儚かった。


「何か…何かあったの?」

「えっ」

「いや、その、やっぱりこの季節に転校っていうのは…君も受験生なわけだし、考え物だというか」

「………」

「ご、ごめん。気に障ったなら謝るよ。ごめんね。無理に話そうとしなくていいから」


そう言ってラクスの横顔を覗くと、俯いた瞳から涙が一筋流れていた。
彼女は何をやらせても綺麗に見えるんだな、と改めて思った。
しかしそれと同時にやっぱり儚くて脆い、危なっかしい人だと思った。


「キラ様は、お優しいのですね。久しぶりに人の優しさに触れた気がします」


こう言ってキラに向けた彼女の笑顔は、キラにとって何処の誰よりも愛しい笑顔だった。





中2の冬、その先生は臨時教師としてラクスのクラスを受け持った。
眉目秀麗で優しかったその先生は、どの生徒からも慕われ尊敬されていた。
ラクスもそのうちの1人となっていたが別の感情も抱いていた。

それは恋。
だが、生徒が先生に恋することなんてあってはならないこと。
ラクスもそのことは分かっていたが卒業が近づくたびに、ただひたすら焦燥感に馳せられていた。


確かに先生に対するこの恋焦がれている想い自体が間違っていたのかもしれない。
しかし、それに気付くのは告白をした後だった。

ラクスが先生に告白したことが学校中にばれてしまった。
誰にも教えていなかったこの秘めた思いが、どうして学校中に知れ渡るのだろうか。
その答えは容易だった。
先生が『先生』という立場の危うさからラクスをこの学校から追い出そうと、教師に生徒に言いふらしたのだ。
先生の思惑通り居辛くなったラクスは転校を決意したのだった。

悲しい結末。
しかし、ラクスにとっては良かったのかもしれない。
立場を省みるような男の人から愛してほしくはないからだ。


この季節この街に越してきたのも何かの縁かもしれない。
越してきた時にこの狂い桜が咲いていたのも何かの縁かもしれない。
この人に、今まで誰にも話したことのない自分の想いを打ち明けたのも何かの縁かもしれない。

自分にはまだ何も分からないことだらけだけど…。





話し終え、黙り込んでしまったラクスの頭の上を、ぽんぽんと何か温かいものが触れた。


「話してくれて、ありがとう。君はがんばったんだね」


彼の微笑んだ笑顔が今はラクスの薬となって心に溶け込んでいく。
それは温かくじわりじわりと優しさで包んでいく。


「あの、狂い桜をみてごらん」


キラとラクスは狂い桜を見た。


「今はまだ咲いたばかりだけど、いづれ花びらをしんしんと降らせ、緑の葉をつける。その葉もいづれは落ち、枯れてしまうけど、蕾をつけまた、今のようにおいおいと花をつける。あの花は自分自身で成長していける。君もそうでしょ?」


キラはラクスの頭をまたぽんぽんと優しく触った。
手の下から見せたラクスの顔はほんのり赤みを帯びていたが、優しい笑顔で染められていた。





花も人も成長していける。
そこで自分を大きくしていけばいい。
そこで自分を周りを換えていけばいい。
僕はいつまでも君を見守り続けるよ。

そのためにも今、一歩を踏み出す。





「ラクスって呼んでいいですか?」
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